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病院薬剤師のAutmです!
乗り物酔いの薬であるアネロン「ニスキャップ」とアネロン「キャップ」。
価格.comの酔い止め薬人気売れ筋ランキングにおいてアネロン「ニスキャップ」はトラベルミンを抑えて1位になっています(2020年7月4日現在)。
果たしてアネロンは乗り物酔いの薬としてどの程度効果があるものなのでしょうか。
そして同じく1日1回の酔い止めであるトラベルミン1との違いはどこにあるのでしょうか?
- アネロン「ニスキャップ」について知りたい!
- アネロン「キャップ」について知りたい!
- トラベルミン1との違いを知りたい!
そんな方のために記事を書いています。
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目次
アネロン徹底解説!トラベルミン1との違いとは?【乗り物酔いの薬】
アネロン「ニスキャップ」の概要
マレイン酸フェニラミン | 30mg | 嘔吐中枢の興奮を抑え、はきけ・めまいなどの症状をしずめます。 |
アミノ安息香酸エチル | 50mg | 胃に直接作用し、はきけをおさえます。 |
スコポラミン臭化水素酸塩水和物 | 0.2mg | 自律神経の興奮を抑え、はきけ・めまいなどの症状をしずめます。 |
無水カフェイン | 20mg | 乗物酔いに伴うめまい、頭痛をやわらげます。 |
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) | 5mg | 消耗したビタミンを補い乗物酔いによるはきけをやわらげます。 |
- 成人(15歳以上):1回1カプセル
- 15歳未満:服用しないこと
- 1日1回1カプセルの服用で長時間効果が持続
- 5種類の有効成分で、しっかり効く
- 胃に直接はたらき乗り物酔いの「吐き気」に優れた効果
基本となる抗ヒスタミン薬のマレイン酸フェニラミン、抗コリン薬のスコポラミンに加えて3つ、計5つの成分が含まれています。
それぞれの成分については後で詳しく説明します。
アネロン「キャップ」の概要
マレイン酸フェニラミン | 15mg | 嘔吐中枢の興奮を抑え、はきけ・めまいなどの症状をしずめます。 |
スコポラミン臭化水素酸塩水和物 | 0.1mg | 自律神経の興奮を抑え、はきけ・めまいなどの症状をしずめます。 |
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) | 2.5mg | 消耗したビタミンを補い乗物酔いによるはきけをやわらげます。 |
アミノ安息香酸エチル | 25mg | 胃に直接作用し、はきけをおさえます。 |
無水カフェイン | 10mg | 乗物酔いに伴うめまい、頭痛をやわらげます。 |
- 7〜14歳:1回1カプセル
- 7歳未満:服用しないこと
大人用のアネロン「ニスキャップ」と同じ成分が半分の量で含まれています。
7〜14歳の子どもにはこちらですね。
トラベルミン1との違いは?
トラベルミンシリーズについてはこちらの記事で解説しています。
トラベルミンシリーズの選び方について解説!【フローチャートあり】その中でトラベルミン1はアネロンと同じく1日1回の薬ですが、アネロンとトラベルミン1の違いはどこにあるのでしょうか。
これについて検証していきたいと思います。
まず、トラベルミン1の用法、成分は次のようになっています。
- 用法用量
- 15歳以上:1回1錠1日1回
- 15歳未満:服用しないこと
- 成分(1錠中)
- 塩酸メクリジン50mg:抗ヒスタミン薬
- スコポラミン臭化水素酸塩水和物0.25mg:抗コリン薬
用法用量はどちらも同じですが、成分は大きく違っていますね。
比較の表にするとこんな感じになります。
アネロン「ニスキャップ」 | アネロン「キャップ」 | トラベルミン1 | |
用法用量 | 15歳以上1回1錠1日1回 | 7〜14歳1回1錠 | 15歳以上1回1錠1日1回 |
成分 | ・マレイン酸フェニラミン30mg ・スコポラミン臭化水素酸塩水和物0.2mg ・アミノ安息香酸エチル ・無水カフェイン ・ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) | ・マレイン酸フェニラミン15mg ・スコポラミン臭化水素酸塩水和物0.1mg ・アミノ安息香酸エチル ・無水カフェイン ・ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) | ・塩酸メクリジン50mg ・スコポラミン臭化水素酸塩水和物0.25mg |
抗コリン薬は量に若干違いはありますが、どちらもスコポラミン臭化水素酸塩水和物が含まれています。
スコポラミン(やアトロピン、ヒオスチアミン)は第一次世界大戦の前に既に乗り物酔いを治療するために使用されています。
Atropine, scopolamine (hyoscine), and hyoscyamine have already been used to treat MS before World War I.
CNS Neurosci Ther. 2016 Jan; 22(1): 15–24.
上記引用のようにスコポラミンは昔から使用されている成分です。
抗ヒスタミン薬はアネロンにはマレイン酸フェニラミンが、トラベルミン1には塩酸メクリジンが含まれています。
塩酸メクリジンが12歳未満では安全性が確立されていない[3]のに対して、マレイン酸フェニラミンは1歳から使える薬[5]とされています。そのためアネロンには小児用が発売されているのですね。
メクリジンは昔から広く用いられている成分です。
抗ヒスタミン薬であるメクリジンは、乗り物酔いの予防的治療や管理に広く用いられてきました。
Meclizine, an antihistamine, has been widely used for prophylactic treatment and management of motion sickness.
Wang Z, Lee B, Pearce D, et al. Meclizine metabolism and pharmacokinetics: Formulation on its absorption. J Clin Pharmacol 2012;52:1343–1349.
マレイン酸フェニラミンも抗ヒスタミン薬として広く用いられている成分ですが、乗り物酔いに効果があるとする報告は少ないようです[1]。
どちらも副作用として眠気が出ることが想定されますが、海外旅行のフライトなど長時間の移動を寝て過ごす場合には逆に眠気を利用できるでしょう。
アネロンにはカフェイン(コーヒーに含まれる成分)が含まれているため、ある程度眠気覚ましとして作用することが考えられます。そのため、1日1回が良いけどあまり眠気が起きにくいほうが良いという方は成分的にはどちらかというとアネロンのほうが眠気は起きにくいことが想像されます。
ただ、公式サイトのカフェインの解説では「乗物酔いに伴うめまい、頭痛をやわらげます」と書かれている反面、下記文献[2]のようにカフェイン自体の乗り物酔いに対する有効性は実証されていないようです(この文献は2016年発表のものなので、もしかしたらこの後新しい研究結果が出ているのかもしれません)。
乗り物酔いの管理におけるカフェインの単独またはスコポラミンと抗ヒスタミン薬との組み合わせでの有効性を評価するための研究は実行されていません。
no study has been performed to evaluate efficacy of caffeine in the management of MS alone or in combination with scopolamine and antihistamines.
CNS Neurosci Ther. 2016 Jan;22(1):15-24.Epub 2015 Oct 9.
そのため、抗ヒスタミン薬による眠気対策として配合されていると考えるのが無難でしょう。
また、副作用としてトイレが近くなる可能性があるため、気になる人は気になると思います。
ピリドキシンはビタミンB6を補充する注射薬として病院にも置かれています。
アネロンに含まれているピリドキシンは「消耗したビタミンを補い乗物酔いによるはきけをやわらげます」と公式では記載されていますが、乗り物酔いの吐き気に対して明確な効果があるという根拠がないという意見[1]もあるようです。
アミノ安息香酸エチルは胃粘膜の神経伝達を麻痺させ、吐き気や腹痛の症状を緩和する作用があるとされています。
医療用医薬品としても「胃炎、胃潰瘍に伴う疼痛・嘔吐」に対して承認されています[6]。
まれに副作用として口渇(口が渇くこと)や便秘等の症状が起きることが知られている[6]ため、これらの症状が現れたときは使用を中止してください。
また、乳幼児(7歳未満)への投与でメトヘモグロビン血症というチアノーゼ(唇や手足が青紫色になる状態)を起こす疾患が起きることが報告されており、薬の説明書でも乳幼児への投与は飲ませてはいけないという意味の「禁忌」となっています[6]。
そのため、7歳以上に飲ませても良いからと言って、7歳未満の乳幼児には決して飲ませない、かつ薬は手の届かない場所に置くようにしてください。
服用後の自動車運転はどちらも禁止です[6][7]。
前立腺肥大・緑内障の方は服用できません[6][7]。
アネロンの薬の説明書には妊婦の方は「相談すること」と記載されています。
スコポラミンやマレイン酸フェニラミンは妊娠中でも服用できると考えられている成分ですが、アミノ安息香酸エチルには「妊娠初期の使用で奇形リスクを高める」という報告[5]があるため妊娠中は避けたほうが良いかもしれません。
トラベルミン1の薬の説明書にも妊婦の方は「相談すること」と記載されています。
塩酸メクリジンは妊婦に対する安全性情報があまりなく、はっきりしたことが言えません。そのため、こちらもあまり推奨はできないと言えるでしょう。
あくまで希望小売価格での比較ですが、アネロンのほうが比較的安く値段が設定されているようです。
実際の販売価格は店頭や通販サイトで確認してください。
まとめ
アネロンについてトラベルミン1との違いを基に解説しました。
アネロンのトラベルミン1と比較した際の特徴は大きく分けると「トラベルミン1にはない成分が3つ含まれている」ということと「小児(7〜14歳)にも使用できる」ということの2つが挙げられると言えるでしょう。
ただ、一方にはない成分が含まれているからと言って必ずしもそちらのほうが優れているとは限りません。上に書いたように副作用も少なからずありますしね。
あとは、やはり価格でしょうか。アネロンのほうが安いのは大きな魅力でしょう。
ぜひ、これまでの記載を踏まえた上であなたが良いと思ったほうを選んでみてください。一方を選んで合わなさそうだったらもう一つの方、といった感じでも良いと思います。
参考文献
[1]児島悠史(2019)「OTC医薬品の比較と使い分け」羊土社
[2]Li‐Li Zhang, et al, Motion Sickness: Current Knowledge and Recent Advance, CNS Neurosci Ther. 2016 Jan; 22(1): 15–24.
[3]Wang Z, Lee B, Pearce D, et al. Meclizine metabolism and pharmacokinetics: Formulation on its absorption. J Clin Pharmacol 2012;52:1343–1349.
[4]Andrew Brainard et al, Prevention and Treatment of Motion Sickness, Am Fam Physician. 2014 Jul 1;90(1):41-6.
[5]Heinonen OP, et al, Birth Defect and Drugs in Pregnancy, pp357-365, Publishing Science Group, 1997
[6]横山俊平ほか(2015)「小児の薬の選び方使い方 改定第4版」南山堂
[7]アミノ安息香酸エチル 添付文書
[8]トラベルミン1 添付文書
[9]アイキャッチ画像:Pikisuperstar – jp.freepik.com によって作成された people ベクトル