実臨床の議論を図で整理!

【ディベート】NSAIDsに対するレバミピドvs酸分泌抑制薬(インフォグラフィック付き)

ある日の調剤業務…

乙さん
乙さん

はぁ、今日はこればかりだなぁ。

甲さん
甲さん

ため息なんてどうしたんですか…?

乙さん
乙さん

今日は整形外科の定期処方日で、ロキソプロフェンとレバミピドの処方ばかり。もう飽きてしまいました。

甲さん
甲さん

そういえばこっちの消化器の先生、ロキソプロフェンの追加処方に対してファモチジンが開始になってますね。

乙さん
乙さん

え?レバミピドでいいんじゃないですか?わざわざH2遮断薬やPPIなんて。

甲さん
甲さん

まあ、NSAIDs潰瘍の予防ならレバミピドより効果が強そうだし…。

乙さん
乙さん

うーん、でもファモチジンだと腎機能の評価も必要ですし、高齢者だとせん妄リスクもありますよね。PPIも長期投与では認知症や骨粗鬆、CD腸炎とかのリスク上昇の話もありますし…。

さて、今回はNSAIDs潰瘍の予防薬として胃粘膜保護薬であるレバミピドと胃酸分泌抑制薬のどちらを適切と考えるか?という両者の主張をエビデンスを元に追求したいと思います。

それではお互いの主張の根拠を見ていきましょう。

酸分泌抑制薬側の主張①国内ガイドラインの確認

NSAIDsの3ヵ月以上長期投与例での一次予防効果は,PG製剤(ミソプロストール400〜800μg/日)6〜11),PPI(オメプラゾール20mg,40mg/日)および高用量H2RA(ファモチジン80mg/日)など多くのRCTやメタアナリシスでの有用性が報告されているが,潰瘍の既往歴の記載がないものもある.高齢者や心血管イベントを有する例では,PPI投与で潰瘍合併症のリスクを2/3に低減したと報告されている

消化性潰瘍診療ガイドライン2015

潰瘍既往歴のある患者の NSAIDs 潰瘍の予防には PPI,PG 製剤が有効であり,第一選択薬として PPI 併用投与を推奨する.

出血性潰瘍既往歴のある患者の NSAIDs 出血性潰瘍の再発予防には,COX-2 選択的阻害薬セレコキシブに PPI 併用を推奨する.

消化性潰瘍診療ガイドライン2015
甲さん
甲さん

ガイドラインがこれだからね。やっぱりPPIをしっかりと使うべきかな。

乙さん
乙さん

うーん、確かに適応から見てもそうですね。でも、あえてNSAIDs開始時にPPIを開始することは少ない気がします。投与期間の問題でしょうか。少し調べてみます。

消化性潰瘍診療ガイドラインでは3ヶ月間超のNSAIDs使用や潰瘍既往などのハイリスク患者に対してはしっかりとPPIやミソプロストールを用いることを推奨しています。一方で、短期間やハイリスク症例以外に対しての具体的な推奨は特にありません。

では、レバミピドの根拠はどうでしょう。

レバミピド側の主張①

乙さん
乙さん

調べてみたら、ミソプロストールに対してこんな試験結果がありました。

潰瘍既往のない症例で,レバミピド300mg/日での予防試験で,12週間の観察において胃潰瘍,十二指腸潰瘍の発症抑制効果はミソプロストール600μg/日と同等であることが示されている

Park SH, Cho CS, Lee OY, et al. Comparison of prevention of NSAID-induced gastrointestinal complica-tions by rebamipide and misoprostol: a randomized, multicenter, controlled trial-STORM STUDY. J ClinBiochem Nutr2007; 40: 148-155

消化性潰瘍の既往、60歳以上、PSL≧5mg/日の使用のいずれか1つのリスクを認めるNSAIDs長期使用群で,レバミピド300mg/日での予防試験で,12週間の観察において胃潰瘍の発症抑制効果はミソプロストール600μg日と同等だった。しかし、その潰瘍発症率は両者約20%だった。

Kim JH, Park SH, Cho CS, et al. Preventive efficacy and safety of rebamipide in nonsteroidal anti-inflammatory drug-induced mucosal toxicity
Gut Liver. 2014 Jul;8(4):371-9.
甲さん
甲さん

レバミピドにもエビデンスはあるのか。300~500人程度の症例数や人種に大きな偏りがある点は気にはなるけど…。

これらの論文では潰瘍既往の有無に関わらず、レバミピド300mg/日の投与がミソプロストール同様に潰瘍発症の抑制効果があることが示されています。

試験結果はいずれも、ガイドラインでのPPIの推奨同様に12週間(3ヶ月)です。リスクについてはPSL≧5mgの記載が気になります。ガイドライン上はステロイド単独に対するPPIの併用は特に推奨の根拠がないとされています。

予防の効果が本当に同程度であれば、ミソプロストールが下痢等の副作用頻度が多いことを考慮すると、レバミピド使用の方が有利な印象があります。

乙さん
乙さん

さらにレバミピドにはこんな利点もあるようですよ。

NSAIDs+PPIを投与時に、プラセボ併用群(38例)とレバミピド300mg/日併用群(34例)に割り付けて2週間後に小腸粘膜病変を評価した結果、粘膜病変数の増加にレバミピド群で少ない傾向があるものの有意差は認められなかった。

Fujimori S, Takahashi Y, et al. Rebamipide has the potential to reduce the intensity of NSAID-induced small intestinal injury: a double-blind, randomized, controlled trial evaluated by capsule endoscopy.
J Gastroenterol. 2011 Jan;46(1):57-64.

3ヶ月以上LDAまたはNSAIDsを投与後、プラセボ群とレバミピド300mg/日群に割り付けて4週間後に小腸粘膜病変を評価した結果、レバミピド群で潰瘍数やびらんが有意に低下した。また、総タンパク数もレバミピドで優位に増加した。

Kurokawa S, Katsuki A, et al. A randomized, double-blinded, placebo-controlled, multicenter trial, healing effect of rebamipide in patients with low-dose aspirin and/or non-steroidal anti-inflammatory drug induced small bowel injury
J Gastroenterol. 2014 Feb;49(2):239-44.
乙さん
乙さん

これはもうレバミピドでOKじゃないでしょうか?

最近ではレバミピドのNSAIDsによる小腸潰瘍予防効果も報告されています。

これはPPIでは予防できないといった報告もあり、レバミピド投与の有用性を支持する報告といえるかもしれません。

酸分泌抑制薬側の主張②

甲さん
甲さん

確かに、レバミピドにも小腸潰瘍予防の報告が思っていたよりあるんですね。私ももう少し調べてみたら、こんな報告がありましたよ。

NSAIDsを4週間以上使用しており、さらに継続する群を背景に、ファモチジン20mg/日群とレバミピド300mg/日群の併用前と併用4週間後のModified Lanza scoreは、ファモチジンでNSAIDs潰瘍の改善がみられるが、レバミピドでは改善も増悪もさせなかった

Yamao J, Kikuchi E, et al. Assessing the efficacy of famotidine and rebamipide in the treatment of gastric mucosal lesions in patients receiving long-term NSAID therapy (FORCE–famotidine or rebamipide in comparison by endoscopy).
J Gastroenterol. 2006; Dec;41(12):1178-85.
乙さん
乙さん

日本人の報告ですね。既に起こった潰瘍に対するレバミピドの投与は潰瘍の改善効果がイマイチですね。

こちらの報告からは、仮にNSAIDs潰瘍が起こってしまっていた場合は、レバミピドの投与では不十分であることが示唆されるでしょう。

レバミピド側の主張②酸分泌抑制薬の長期使用による注意点

乙さん
乙さん

でも冒頭お話していた通り、PPIやファモチジン使用のデメリットは無視できないですからね。

甲さん
甲さん

確かにH2ブロッカーは認知症やせん妄リスクも知られていますよね……。

PPIの使用は、主に胃酸分泌抑制を介して、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症、その他の腸管感染症、肺炎、骨粗鬆症性骨折を含むいくつかの感染症のリスクの増加と関連している可能性があることが報告されている。

Kim T, Kim E, Hong S:; et al, Effectiveness of acid suppressants and other mucoprotective agents in reducing the risk of occult gastrointestinal bleeding in nonsteroidal anti-inflammatory drug users, Sci Rep. 2019; 9: 11696.

PPIでの治療はS. pneumoniae感染を増加し、市中肺炎発症の可能性を約2倍に増加させることと関連していた。

de Jager CP, Wever PC, Gemen EF, van Oijen MG, van Gageldonk-Lafeber AB, Siersema PD, Kusters GC, Laheij RJ
Aliment Pharmacol Ther.Proton pump inhibitor therapy predisposes to community-acquired Streptococcus pneumoniae pneumonia.2012 Nov; 36(10):941-9.

プロトンポンプ阻害薬は他剤との潜在的な薬物相互作用が懸念されている。

Yucel E, Sancar M, Yucel A, Okuyan B, Adverse drug reactions due to drug-drug interactions with proton pump inhibitors: assessment of systematic reviews with AMSTAR method.
Expert Opin Drug Saf. 2016; 15(2):223-36.

PPIの長期使用については、CD腸炎や肺炎、骨粗鬆等のリスクについて報告がある一方、それらを増加させないという報告もあり、現状エビデンスの集積が待たれています。

相互作用についてはCYP2C19を介したものや、胃酸分泌抑制による胃内pHの変化のために薬剤の吸収に影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。

まとめ

レバミピド~まとめ~

・潰瘍既往の有無に関わらず、ミソプロストールと同等の潰瘍予防効果 

 が知られている。

・小腸潰瘍の予防効果について報告がある。

・ファモチジンに対してNSAIDs潰瘍に対する改善効果が無いという

 報告がある。

・副作用等の大きなデメリットが少ない。

・添付文書上、NSAIDs潰瘍予防の適応は無い。

PPI・H2遮断薬~まとめ~

・消化性潰瘍ガイドラインではNSAIDs潰瘍予防として3ヶ月以上の

 NSAIDs服用や潰瘍既往歴のある方への併用が推奨。

・PPI長期使用によるCD腸炎リスク等の可能性がある。

・CYP2C19や胃酸分泌抑制を介した相互作用には注意が必要。

結論

乙さん
乙さん

やっぱり、レバミピドの処方は意味が無いことはなさそうですね。

甲さん
甲さん

そうですね。ただ、既に潰瘍既往のある方やハイリスクの方にはPPIが良いのかもしれません。

NSAIDs内服中に潰瘍が起こるとレバミピドでは治療効果が得られない可能性がありそうです。

乙さん
乙さん

その場合は相互作用への注意が必要ですね。薬剤師であれば長期使用によるリスクもしっかりと把握する必要があると思います。

以上、今回はNSAIDsに対する胃薬はレバミピドとPPI/H2-blockerのどちらが良いのかという点を考察してみました。リスクの少ない方やNSAIDsの使用がそれほど長期とならない方にはレバミピドでも十分かもしれません。一方で、リスクの高い症例ではガイドラインに従って胃酸分泌抑制薬の選択が必要でしょう。

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