実臨床の議論を図で整理!

喉に痛みがある時の咳に使う薬は何が良い?

PHAL
PHAL

こんにちは。薬剤師のPHALです。

最近、風邪をひくと必ず咳で腹筋が痛くなります。

風邪の具体的な症状として咳は外せません。

市販の咳止めには多くのお薬があり、複数の成分が配合されています。これらのお薬から自分にあったいお薬を選ぶには実際に咳の症状に合わせたお薬選びが必要です。

今回は、市販薬の咳止めの第一弾としてのどの痛みを伴う咳止めについて解説していきたいと思います。

こんな人のために記事を書いています

市販の咳止めに含まれる抗炎症成分
こんな人のために記事を書いています
  • 市販薬に含まれる成分の内、のどの痛みに効果のある成分は?
  • たくさん市販されている咳止めから、のどの痛みのある咳に効くお薬を買いたい人

市販の咳止めに含まれる抗炎症成分について

咳止めに含まれる抗炎症成分の種類

のどの痛みは基本的には喉の炎症によって引き起こされています。のどの痛みを伴う咳止めには抗炎症作用のある成分が配合されているものを買う必要があります。

市販薬中の抗炎症成分の種類はあまり多くありません。

市販の咳止めに含まれる抗炎症成分
  1. トラネキサム酸
  2. セチルピリジニウム
  3. 銀翹散
  4. 桔梗湯

1.はベンザブロックせき止め錠または咳止め液などに配合されています。医療用ではトランサミン®錠/カプセルとして単独の成分として使用されることがあり、効能・効果にのどの充血や発赤の記述があります。

2.のセチルピリジニウムは主にトローチに配合されており、口や喉で炎症が起こっている際に、殺菌や消毒が期待される成分となります。市販薬ではベンザブロックトローチや新エスベナントローチなどに使用されています。

3.の銀翹散と4.の桔梗凍はそれぞれ銀翹散エキス顆粒Aクラシエツムラ漢方桔梗湯エキスなどが市販薬として販売されています。

それぞれの成分や使用方法について詳しく解説します。

ベンザブロックせき止め錠/せき止め液

これらのお薬にはジヒドロコデインリン酸塩という比較的強めの鎮咳成分が配合されています。また、一緒に配合されているトラネキサム酸は医療用としてトランサミン錠®というお薬があり、急性の咽頭炎や扁桃炎に対する効果が報告されています。

耳鼻咽喉科疾患(急性咽喉頭炎、急性䬕桃炎、口内炎等)の患者 168 例を対象に、䬶痛、腫脹及び発 赤に対する効果を本剤(84 例)とプラセボ(84 例)との二重盲検比較試験により検討した結果、有効 以上はプラセボ 26.2%(22 例)に対し本剤 52.4%(44 例)で、本剤が有意(p<0.05)に優れていた

宮城 平:臨床と研究 1969;46(1):243-245

ベンザブロック咳止め錠

薬剤の基本情報
  1. 効能
    のどの痛みを伴う せき・たん
  2. 用法・用量
    1日3~4回、食後なるべく30分以内に、水又はお湯で噛まずに飲む
    15歳以上:1回3錠
    12歳~14歳:1回2錠
    12歳未満:服用しないこと
  3. 成分
    9錠(15歳以上の1日服用量)中
    鎮咳成分:ジヒドロコデインリン酸塩 30mg
         ノスカピン 60mg
    気管支拡張成分:dl-メチルエフェドリン塩酸塩 75mg
    去痰成分:ブロムヘキシン塩酸塩 12mg
    抗炎症成分:トラネキサム酸 420mg
  4. その他
    飲みやすいメントール味
    鎮咳成分のジヒドロコデインリン酸塩は眠気や便秘等の副作用が知られています

ベンザブロック咳止め液

薬剤の基本情報
  1. 効能
    のどの痛みを伴う せき・たん
  2. 用法・用量
    1日3~4回、服用間隔を4時間以上あけて使用する。
    15歳以上 10mL
    12歳〜14歳 6.5mL
    12歳未満 服用しないこと
  3. 成分
    40mL(15歳以上の1日最大服用量)中
    鎮咳成分:ジヒドロコデインリン酸塩 20mg
    気管支拡張成分:dl-メチルエフェドリン塩酸塩 50mg
    去痰成分:グアイフェネシン 200mg
         セネガ流エキス 0.4mL(セネガ400mgより抽出)
    抗炎症成分:トラネキサム酸 280mg
  4. その他
    飲みやすいメントール味
    ベンザブロック咳止め錠のシロップ剤
    鎮咳成分のジヒドロコデインリン酸塩は眠気や便秘等の副作用が知られています
    1日量としては錠剤より多少各成分が少なめ

ベンザブロックトローチ

これらのトローチ剤にはセチルピリジニウムという殺菌成分が配合されています。炎症時に抗殺菌作用を示すことで、間接的に炎症の改善効果が期待できます。咳止めとしてはベンザブロック咳止め錠等の鎮咳成分としてジヒドロコデインリン酸塩が含有されているもののほうが効果が高いと考えられます。

口中で頻繁に遭遇する病原細菌である溶血性連鎖球

菌や黄色ブドウ球菌またカンジダ等の真菌にも試験管内で

強力な殺菌作用を示す

Benjafi eld N.B, et al.:Lancet. 1955;269:1301-1302
薬剤の基本情報
  1. 効能
    せき、たん、のどの炎症によるのどのはれ・のどの痛み・
    のどのあれ・のどの不快感・声がれ
  2. 用法・用量
    口中に含み、かまずにゆっくり溶かす
    11歳以上:1錠 6回  2時間以上
    8歳〜10歳:1錠 4回  4時間以上
    5歳〜7歳:1錠 3回  4時間以上
    5歳未満:服用しないこと
  3. 成分
    6錠(11歳以上の1日服用量)中
    鎮咳成分:デキストロメトルファンフェノールフタリン塩 60mg
    去たん成分:グアヤコールスルホン酸カリウム 140mg
    抗炎症殺菌成分:セチルピリジニウム塩化物水和物 6mg
  4. その他
    5歳以上から使用可能
    緑茶末(添加物:矯味剤)を配合した、緑色ドーナツ状のトローチ剤
    鎮咳成分も含有されている(デキストロメトルファンは医療機関でのお薬としても使用される)

銀翹散エキス顆粒Aクラシエ

銀翹散は中国の医書『温病条弁[ウンビョウジョウベン]』に記載があり、痛みが強い喉の腫れ、熱感を伴うのどの腫れとそれに伴う咳に効果的とされます。特に、寒気があまりない風邪の引きはじめに良いとされています。

薬剤の基本情報
  1. 効能
    かぜによるのどの痛み・口(のど)の渇き・せき・頭痛
  2. 用法・用量
    1日3回食前又は食間に、水又は白湯で飲む
    成人(15才以上)・・・1包
    15才未満7才以上・・・1/2包
    7才未満5才以上・・・1/4包
    5才未満・・・服用しないこと
  3. 成分
    成人1日の服用量3包(1包2.3g)中
    銀翹散エキス粉末・・・5,900mg
    (キンギンカ・レンギョウ各4.26g、
     ハッカ・キキョウ・カンゾウ各2.556g、
     タンチクヨウ・ケイガイ各1.704g、
     タンズシ・ゴボウシ各2.136g、レイヨウカク0.132gより抽出。)

    *金銀花(キンギンカ)、連翹(レンギョウ)
    ⇒熱の邪気を発散させて熱を冷ます
    *薄荷(ハッカ)、牛蒡子(ゴボウシ)
    ⇒熱を冷ますと同時に頭や目をすっきりさせ、咽の腫れを取り除く
    *桔梗(キキョウ)
    ⇒咳止め、咽喉の腫れを改善
    *甘草(カンゾウ)
    ⇒諸薬を調和させ、胃を保護する
  4. その他
    風邪の引き始め、特に強い喉の痛みのある咳があり、寒気の伴わない時に適した漢方
    キンギョウカやレンギョウは香りが強い。味は漢方独特のクセが強め

ツムラ漢方桔梗湯エキス

漢方は通常、”実証”や”虚証”と呼ばれるヒトの体力に合った漢方薬を選ぶ必要がありますが、桔梗湯はこれらの証に関係なく、誰にでも使いやすいお薬です。特徴としてはそれほど強くない喉の痛みがあり、咳や痰を鎮めたい方にはお勧めです。

薬剤の基本情報
  1. 効能
    体力に関わらず使用でき、のどがはれて痛み、ときにせきがでるものの次の諸症:扁桃炎、扁桃周囲炎
  2. 用法・用量
    次の量を、少しずつ口中に含み、水またはお湯で、徐々に溶かす
    成人(15歳以上) 1包(1.875g) 1日2回
    7歳以上15歳未満  2/3包 1日2回
    4歳以上7歳未満  1/2包 1日2回
    2歳以上4歳未満  1/3包 1日2回
    2歳未満 服用しないでください
  3. 成分
    本品2包(3.75g)中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス0.625gを含有日局カンゾウ 1.5g
    日局キキョウ 1.0g

    *桔梗(キキョウ)
    ⇒咳止め、咽喉の腫れを改善
    *甘草(カンゾウ)
    ⇒諸薬を調和させ、胃を保護する
  4. その他
    体力に関係なく使用可能
    抗炎症作用はマイルド。のどの痛みが強い場合は銀翹散を推奨します。

病院薬剤師の視点から

以上がのどの痛みがあるときに推奨されるお薬でした。ここからはそれぞれのお薬についての評価を病院薬剤師の視点から行います。

病院で使われるトラネキサム酸の量

抗炎症成分のトラネキサム酸が病院で使われるお薬であることは既にご説明しました。

風邪でクリニックや病院にかかった際に、のどの炎症を鎮めるための処方は実際にある処方です。

トラネキサム酸の作用としてはプラスミンという生体内の物質の働きを抑制します。プラスミンは炎症や出血に関わるたんぱく質であるため、この働きを抑えることが抗炎症作用に繋がります。

医療機関で使用される際には、プラスミンが出血に関わるたんぱく質であり、出血部位の止血目的で投与されることが多いです。特に医療用にある注射薬はこの目的で使用されています。その他の目的として皮膚科ではシミ予防などに使用される場合もあります(市販薬における説明書に記載のない目的での使用はできません)。

医療機関での用量は750mg~1500mgの用量での使用が多い印象を受けます。今回ご紹介したベンザブロック咳止め錠420mgと少なめのため効果は薄い可能性があります。

トローチと漢方の使用

トローチは処方薬としてもあり、のどの痛みに対しては頻繁に使用されています。確実で即効的な効果があり、個人的にはその他のお薬より効果が実感しやすい印象があります。

ただし、その作用は短時間であり、使用できる上限の数を考慮して使用する場面を考える必要があります。

漢方は個人的にはあまり桔梗湯が処方されている印象がありません。医師によって好みはあるでしょうが、その他の漢方薬として麦門冬湯小青竜湯など、咳に対して有効性のある漢方が処方されています。これらの漢方についてはまた別にまとめたいと思います。

まとめ

今回は咳止めについて、のどの痛みに伴う咳に効果が期待できるお薬をまとめました。市販薬の咳止めは非常に多く、その他の咳止めについても今後まとめていきたいと思います。

参考文献

[1]児島悠史(2019)「OTC医薬品の比較と使い分け」羊土社

[2]各市販薬 添付文書

[3]トランサミン®錠 添付文書

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA