安全性の高さに優れる解熱鎮痛成分!~アセトアミノフェン~

皆さん、普段『解熱鎮痛薬』は何を買われていますか。頭痛や歯の痛み、関節痛、生理痛、風邪による発熱など、最も身近なお薬といってもよいでしょう。

しかし、いざドラッグストアに行くと解熱鎮痛薬の豊富さに迷ってしまうことがあると思います。そんな時、どれを選んでも同じと思って適当にお薬を選んでいませんか?今回はアセトアミノフェンという成分のお薬についてその効果や副作用、使用上の注意について解説します。

  • アセトアミノフェンの解熱鎮痛効果について
  • アセトアミノフェンの副作用について
  • 飲み合わせや注意事項について

なお、アセトアミノフェンは成分名であり、そのままの名前で市販されていません。『タイレノールA錠』や『ラックル速溶錠』などに箱の裏側の薬効成分名をご覧いただくとアセトアミノフェンの記載があります。

具体的なアセトアミノフェンを含有している商品の買い方についてはこちらの記事をご参照ください。

はじめに

最も身近なお薬~解熱鎮痛薬~

痛み止めや風邪の時との解熱剤など、解熱鎮痛薬を使ったことない人はほとんどいないと思います。病院ではもちろん、ドラッグストアでも様々な種類の解熱鎮痛薬が売られています。

では、解熱鎮痛薬にはどのような種類があるかご存じでしょうか?

代表的なものとしてはロキソプロフェンやイブプロフェンなどの医療現場ではNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれるものや、アセトアミノフェンまたそれらを複数配合したものなどがあります。

今回は、特に安全性の高さから医療現場での処方頻度が多い解熱鎮痛成分であるアセトアミノフェンについて詳細に解説します。

アセトアミノフェンの効果とは?

アセトアミノフェンは1893年に医薬品として初めて使用されました。1949年には解熱鎮痛薬として広く使用されるようになり、その後、副作用面での安全性の高さから世界的に普及し、現在はWHOの必須医薬品モデル・リストにも収録されています。

鎮痛効果について

アセトアミノフェンの痛みを抑える効果は、製薬会社さんが試験したデータとして下記のような効果が示されています。こちらは病院でお医者さんが処方する医療用薬剤の効果として試験されているものです。

  • 腰痛症患者10例に対して1日900mg~2700mg投与した結果、痛みのスコア平均値を改善
  • 歯の痛み7例および抜歯後の痛み25例に対して400mgを頓服したところ、歯の痛みと抜歯後の痛みそれぞれ5例および14例の方で有効以上の効果
  • 風邪による頭痛等の痛みがある方23例に対して400mgを頓服したところ、21例に有効以上の効果

試験を行っている患者さんは多いとは言えないものの、腰痛や歯の痛み、風邪による頭痛等の痛みについては効果が確かめられていると言えます。

解熱効果について

また、解熱剤としても広く使用されており、こちらについても医療用製剤として下記のような資料があります。

  • 風邪による発熱がある方6例に対して400mgを頓服したところ、4例に有効以上の効果
  • 風邪による発熱がある方21例に対して400mgを頓服したところ、平均として38℃以上の熱が6時間後には約37℃に低下

さらに、0歳から6歳までの乳幼児、及び小児に対する発熱についてもいくつかのデータが示されています。

  • 風邪等による発熱がある乳幼児64例に対して1回約6.5mg/kgを頓用したところ、64.1%以上のヒトに有効以上の効果
  • 風邪等による発熱がある小児41例に対して1回15mg/kgを頓服したところ、97.6%の著効・有効率があった。投与後3~4時間で効果が最大となり、約2℃の体温下降が認められた

以上のような効果が示されており、アセトアミノフェンの痛みを抑える効果と熱を下げてくれる効果については信頼できそうです。以下に効果をまとめます。

  • 医療用のアセトアミノフェンは腰痛や頭痛、歯の痛みに対する効果についてデータが示されている。
  • 発熱に対する効果についても有効とされるデータが示されている。
  • 乳幼児及び小児に対する発熱についても有効といえそう
  • 解熱の効果時間は概ね3~6時間、1℃~2℃程度の低下が期待される

アセトアミノフェンは1900年代から世界的に広く使用されており、欧州リウマチ学会や米国老年医学会、米国消化器病学会、米国腎臓財団、米国リウマチ学会など多くの学会でその使用が推奨されています。効果についての信頼性は高そうです。

アセトアミノフェンはどのように効くの?

これらのアセトアミノフェンの効果はどのように発現するのでしょうか。ここではその作用の仕方をご説明しますが、少し難しい話になってしまいます。興味のある方のみお読みください。

アセトアミノフェンは視床下部の体温中枢に作用し、熱放散を増大させることで解熱作用を示します。この解熱は通常、体内の水分移動と末梢血管の拡張により発汗を伴う解熱となります。

また、視床と大脳皮質に対して作用し、痛みを感じるハードル(=痛覚閾値)を上昇させるため、痛みを感じにくくなります。

特徴として末梢のプロスタグランジン合成阻害作用が非常に弱いことがあり、これはアセトアミノフェンが他の痛み止め成分と比べて安全性に優れる(=胃腸障害が少ないなど)理由となります。

アセトアミノフェンの副作用とは?

様々な試験から効果が検証されているアセトアミノフェンですが、どんな薬にも副作用があります。

肝障害~アセトアミノフェンを悪用した事件で有名となった副作用~

アセトアミノフェンといえば肝臓への障害の副作用が非常に有名な副作用として知られています。これについては国内ではメディアにも取り上げられた大きな事件が知られています。

・本庄事件

本庄事件は1995年から計画的に行われた保険金目当ての事件になります。一連の事件の一部で、多額の保険金がかかっていた被害者にアセトアミノフェンとお酒を大量に飲ませて肝不全へと至らせるという手口がとられました。

アセトアミノフェンは用量依存性に肝障害が起こることが知られており、これは飲む量が多ければ多いほど起こりやすいことが知られています。

概ね、成人では意図して1度に大量に飲まなければ、致命的な量には至らないことが多いですが、もともと肝臓の機能低下がある方、高齢者、乳幼児、小児などではより注意が必要でとなります。

また、病院で働いている私の経験から見ても、軽度な肝障害を含めれば比較的起こりやすい副作用だと思います。しかし、入院中の患者さんの場合は、採血データがお医者さんや薬剤師、看護師さん等にしっかりと確認されていれば、大きな問題に繋がる機会は少ないと感じています。

アメリカでは肝硬変の原因物質としてお酒(アルコール)の次に原因となる物質とされています。数年にわたって使用するなど、長期の連用には注意が必要となるでしょう。

なぜ肝障害が起こるのか

それではこの副作用がどのような理由で起こってしまうのかをできるだけ簡単に説明します。

体の中に摂取されたアセトアミノフェンは、体内で無毒化(効果もなくなっていく)されて、体の外に出ていきます。体内での無毒化を行う臓器は肝臓です。

ですが、アセトアミノフェンの量が多すぎたり無毒化に関わる体内の成分の働きが不十分な場合は、この無毒化が円滑に進みません。これにより体内に成分が溜まってしまいます。

溜まった成分は肝臓の細胞を作っているタンパク質に結合してしまい、肝臓の細胞に対する障害となります。

それでも他の痛み止め成分より安全性が高い!

肝臓への障害が知られるアセトアミノフェンですが、他の痛み止め成分(ロキソプロフェンやイブプロフェンなど)よりはかなり安全に使用しやすいといえます。

まずは消化器の副作用が少ない。体内にはプロスタグランジン(PG)という胃を保護する成分があります。ここでは詳細は省略しますが、他の多くの痛み止め成分はこのPGが産生しにくくなります。結果として胃酸による胃腸への障害が増えてしまいます。アセトアミノフェンはこのPGへの作用が少ないため、胃への負担がとても少ないです。

このPGは心臓や血管に対する保護的な作用も知られています。実際にNSAIDsと呼ばれるPGの産生を阻害する痛み止め成分では急性心筋梗塞等の発症リスク増加が知られており、アセトアミノフェンはこの点においても安全に使用しやすいお薬です。

さらに、NSAIDsに代表されるPGの合成阻害作用は腎臓にも悪い影響を与えます。PGが合成されないことで、浮腫や血栓の傾向、虚血傾向となり、結果として腎臓の尿細管という組織への障害となります。この腎臓への障害は回復しない場合も多く、危険な副作用です。アセトアミノフェンではこの副作用が非常に少ないと言えます。

また、医療機関では小児の解熱に対して多くアセトアミノフェンが用いられます。これは、他の痛み止め成分の一部に『ライ症候群』や『インフルエンザ脳症』という重大な副作用の可能性があるためです。

これらのことからアセトアミノフェンは以下の点で安全性が高いと言えます。

  • 他の痛み止めと比較して・・・
    • 消化器への副作用がかなり少ない
    • 心臓や血管への副作用がかなり少ない
    • 腎臓への負担が非常に少ない
    • 乳幼児、小児にも使いやすい

その他の特徴や副作用

それではアセトアミノフェン使用について副作用以外に注意すべきことをご紹介します。

お酒との飲み合わせは最悪

副作用の項でも触れていますが、アセトアミノフェンとお酒の相性は最悪です。簡単に言うとどちらも肝臓に障害を与えるからです。2つを一緒に飲むと肝臓へのダメージは足し算ではなく掛け算的に悪くなります。これはお酒がアセトアミノフェンを無毒化するための肝臓にある生体内成分(=『CYP2E1』という)をブロックしてしまうためです。

アセトアミノフェンをお酒で飲むことは当然ダメですが、お酒を飲んだ夜、寝る前にアセトアミノフェンを飲むこともいけません。

重大な病気を見落とさないようにご注意

これはアセトアミノフェン以外の解熱鎮痛成分にも共通していますが、痛みや体温の上昇は体の危険信号でもあります。『がん』などの病気でも痛みや発熱は起こります。せっかく体が重大な病気について知らせてくれていても、それを薬で誤魔化してしまうとよくありません。原因のはっきりしていない痛みや発熱の場合は特に注意が必要です。

市販薬の錠剤数は商品によって異なりますが、個人的には1箱使い切って症状が長引く場合は医師への相談を推奨したいところです。

その他

その他の特徴については下記のようなものがあります。

  • 痛み止めでアレルギーや喘息のある方は医療者へご相談を
  • 妊娠中の方や授乳婦の方でも使いやすい成分です

まとめ

以上がアセトアミノフェンの特徴です。この解熱鎮痛成分は冒頭でもお示しした通り、その安全性について世界的に評価されている成分ということができるでしょう。市販のお薬ではこの成分を含むお薬がいくつかありますので、今後、ご紹介したいと思います。

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