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病院薬剤師のAutmです
便秘に悩んでいる人でコーラックやスルーラック、タケダ漢方便秘薬などの下剤を使用している人は多く、実際に入院患者でそれらを持ち込む人をよく見ます。
これらは「刺激性下剤」と呼ばれ効果がある反面、クセになりやすいとされているのはご存知でしょうか。
せっかく効果が出ている便秘薬がクセになって効かなくなってしまったら困りますよね。
さて、クセにならないようにするためにはどうすればいいのでしょう。
答えは簡単です。刺激性下剤にはクセになりにくい飲み方が存在します。
そこで、今回はクセになりやすい刺激性下剤のクセになりにくい飲み方について書こうと思います。
- 刺激性下剤を飲んでいる人
- クセになりにくい飲み方を知りたい人
気になる人はぜひ本文を読んでみてください。
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目次
クセになりやすい便秘薬のクセになりにくいたった1つの飲み方
市販の刺激性下剤の例
いわゆる刺激性下剤として売られている市販薬には次のようなものがあります(あくまで1例のため他にもあります)。太字が成分の名前です。
スルーラックS、コーラックハーブなど
ビューラック・ソフトなど
コーラックファースト、ビューラックAなど
タケダ漢方便秘薬
刺激性下剤の作用機序
刺激性下剤はどのように体の中で作用するのでしょうか?
簡単に言うとその名の通り、大腸を刺激することで排便を促進します。
少し難しく言うと大腸の筋層間神経叢というところに作用して大腸収縮を促進し、腸管からの水分吸収を抑制することで緩下作用(下剤としての作用のこと)を現します。
腸管の収縮を促進するため腹痛が起きやすいことも知られています。
クセになりやすいとは?
以前の記事でも書きましたが、クセになりやすいとは大まかに言うと徐々に薬が効かなくなってくるということです。
酸化マグネシウムE便秘薬を選ぶべきはこんな人!効果や副作用について解説詳しくはジャンプ先の記事に記載しているので気になる人は読んでいただきたいのですが、このクセになった(大腸が伸び切ってしまった)状態を医学的には「大腸メラノーシス」と言い、大腸ポリープや大腸がんとの関連性も指摘されています。
実際に長期連用することによって腸管運動の低下や腸管が拡張することが認められています。
また、この耐性の出現だけでなく、習慣性や精神的な依存性、便意の消失などの問題点も指摘されています。
これらのことを統合して「クセになりやすい」と表現しているのですね。
「クセになりやすい」と言うのは簡単ですが、実際には字面よりも深刻な事態を引き起こしかねないのです。
刺激性下剤を飲むべき時とは?
では、どのようなときに刺激性下剤を飲むべきなのでしょうか?
世界消化器病学会は便秘症の治療に対して次のような3段階ラダー[1]を提唱しています。
便秘に対する生活習慣の改善についてはこちらの記事でまとめています。
浸透圧性下剤→酸化マグネシウムなど
上皮機能変容薬→市販薬にはない成分の医療用医薬品
どうでしょうか。刺激性下剤は第1段階、第2段階では現れず、第3段階で初めて登場していますね。
先に挙げた「クセになりやすさ」が問題となるため、最初から使うべきではない薬ということです。
クセになりやすい便秘薬のクセになりにくいたった1つの飲み方
クセにならないようにするためには刺激性下剤はどのように飲めば良いのでしょうか?
医療用医薬品の刺激性下剤であるセンノシド錠の添付文書には「連用による耐性の増大等のため効果が減弱し、薬剤に頼りがちになることがあるので長期連用を避けること」と記載されています[4]。
日本の便秘治療のガイドライン[2]でも「慢性便秘症に対して,刺激性下剤は有効であり、頓用または短期間の投与を提案する」との記載があります。
そのため毎日飲むのではなく、ここぞというときの切り札として使うのが最も推奨されます。
具体的には酸化マグネシウムなどの非刺激性下剤を毎日お腹の調子に合わせて服用し、服用しても排便が得られなかった日だけ寝る前に刺激性下剤を服用する。
翌日出れば良し。出なければ刺激性下剤の量を少し増やしてまた寝る前に飲む(薬の説明書の範囲内で)。
というように自己調節するのが良いと思います。
刺激性下剤は「適切な排便を確保するために適量を適切な頻度でレスキューとして使用する限りは安全かつ有効な薬剤であり、耐性や腸管壁への障害を杞憂して過度に忌避する必要はない」との意見もあります[3]。
また、クセになるのは可逆性であり(元に戻るということ)、原因である刺激性下剤をやめると回復すると言われています。
そのため、毎日ではなく頓服として、切り札として飲むことを心がけることがとても大切なことだと思います。
それでもダメなら
上のことを試してみたけど全然出ないので毎日刺激性下剤飲んでもいいですかね!(半ギレ)
そう思う方もいるかもしれません。
そんなときに便が出ないからと言って刺激性下剤を毎日大量に服用すると、それこそクセになる悪循環に陥ってしまうことになるので、絶対に避けなければなりません。
そんなこと言っても毎日便が出ないと嫌です!
毎日便が出ないと便秘なのでしょうか?
そもそも適正な排便回数というのは諸説ありますが、毎日ではなく週3回〜1日3回の間とされています。
便秘とは一般に4~5日以上にわたって排便がないことをいいますが、便通には個人差があり、1~2日排便がなくても、不快感がなければ、便秘とはいえませんし、毎日排便があっても排便量が少なくすっきりしない状態なら便秘といえます。
愛知県薬剤師会 薬事情報センターより
つまり人それぞれということですね。
そのため腹部膨満感や腹痛など症状がない限りは数日に1回の排便でも特に問題はないと言えます。
週3回も出てなくてお腹が張ってつらい!
そんなときは、病院に行きましょう。
上で挙げた便秘症の治療に対する3段階ラダーでもチラッと出てきた上皮機能変容薬のように、病院で処方できる医療用医薬品には市販薬には無い成分のものもあります。
実際に病院では最近はその上皮機能変容薬など市販薬に無い成分の便秘薬が処方されることが多いです。
そのため病院を受診して便秘薬を処方してもらいましょう。
その際は医師に「酸化マグネシウムを毎日飲んでいて就寝前に刺激性下剤を何回か試しているが便が出ないため他の薬を試してみたい」など自分の状況をしっかりと伝えるようにしましょう。
まとめ
- 刺激性下剤は大腸を刺激することで排便を促進する薬
- 長期連用すると「クセになりやすい」
- 毎日飲むのではなく、ここぞというときの切り札として使う
- 毎日便が出なくても良い
- 医療用医薬品には市販薬には無い成分のものもあるため、市販の便秘薬の効果が無ければ病院を受診しましょう
参考文献
[1]Lindberg G et al;World Gastroenterology Organisation:World Gastroenterology Organisation global guideline:Constipation-aglobal perspective.J CIin Gastroenterol 2011;45:483-487.
[2]日本消化器病学会関連研究会:慢性便秘の診断・治療研究会(編).慢性便秘症診療ガイドライン2017.南江堂,2017.
[3]味村俊樹「慢性便秘症の初期診療」診断と治療 106(7): 811-819, 2018.
[4]センノシド錠 添付文書