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薬剤師のPHALが解説します
以前、下記の記事で喫煙により具体的な健康被害を及ぼす成分について詳しくご紹介しました。
タバコの成分を徹底解説!ニコチンやタールって何?加熱式たばこの健康への影響は?
今回は、禁煙の現状とその方法、禁煙補助薬の具体的な使い方や違いについて詳しくご紹介します。
- タバコの成分と健康被害について
- 市販されている禁煙補助薬と処方される禁煙補助薬について
- 市販の禁煙補助薬の作用や注意。禁煙率について
禁煙を目指す方に向けて、禁煙補助薬の種類とその違い、使用上の注意と禁煙率についてご紹介します。
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目次
はじめに
禁煙の成功の秘訣は何でしょう?
健康増進法の一部改正やタバコ税の増税もあり、社会的な嫌煙の傾向が強くなり、禁煙される方は徐々に増えています。現在、喫煙されている方も7割程度の方はいつかタバコをやめようと考えているといわれています。
実際の禁煙治療はどのように行われ、禁煙補助薬はどのように使われているのでしょうか?
禁煙をするタイミングと方法について
禁煙を行うきっかけは人によって様々です。2016年度に行った製薬会社:ファイザー株式会社の調査では以下のような結果が得られています。
原因として最も多いのが健康を気にしてという回答であり、次にタバコ代、3番目に受動喫煙への配慮と続きます。また、同じアンケート上で、禁煙をしたことがない人を対象に、今後どのようなことがあったら禁煙を考えるかという問いに対しても、健康を損ねた場合とタバコの価格上昇が上位の回答になっています。
理由は様々ですが、その人にとって禁煙してみようかなと思ったタイミングで行動することが重要です
いざ禁煙を始めようと考えたときには、どのような方法で禁煙するのがよいでしょうか?以下のような方法は、いずれも推奨しにくい方法といえます。
- 1日の本数を徐々に減らしてく
- タール値やニコチン値が高いタバコから軽いタバコへ切り替える
- 紙巻きたばこから加熱式たばこに切り替える
本数を徐々に減らしていく方法は、最後の0本にはなかなか到達できません。仮に1日の本数を20本⇒10本⇒5本⇒3本と減らした場合、多くの場合最後の3本は決まったタイミングで吸います。こうなると、本吸った時点で次のタイミングが待ち遠しくなり、我慢して吸ったタバコは満足感が強いです。これが続いているうちに、徐々に回数が増えて、元の本数へ戻ってきてしまいます。
また、タバコを吸いたいという欲求は『ニコチンという物質への依存状態』です。例えタバコを軽いものへ切り替えた場合についても、1日に摂取しているニコチン量を維持するために結局、本数が多くなってしまい、意味がなくなってしまうことが多いです。
最もよい禁煙方法は強い意志で、バッサリとやめることといえます。
病院での禁煙治療とは
病院での禁煙治療は2006年より健康保険が適用されるようになり、施設の基準と患者の基準をみたす必要があります。
この保険診療名は「ニコチン依存症管理料」とされており、現在では35歳未満の方に対して喫煙本数や喫煙年数によらず保険適用となっています。
実際に禁煙治療を受けることができる人は次のことをすべて満たしている必要があります。
- ニコチン依存症に係るスクリーニングテストで5点以上であり、ニコチン依存症と診断されること
- 35歳以上の場合は1日の喫煙本数×喫煙年数(=ブリンクマン指数)が200以上であること
- 直ちに禁煙を希望されていること
- 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、治療を受けることを文書で同意すること
この内、最初のスクリーニングテストは10項目の質問があり、その内容は主に一度タバコをやめたり減らそうとした際に、結局タバコを吸ってしまうことがあったかとなっています。禁煙外来での治療は、禁煙を強く希望しており、ご自身でタバコを減らそうとしたが、うまくいっていないことが前提といえます。
禁煙治療では、基本的に全部で5回の受診が必要で、その期間は12週間程度となります。それぞれの受診のタイミングは以下の通りです。
以上のように、基本的な禁煙治療の流れでは3か月間、各タイミングで受診する必要があります。
病院での禁煙治療では、ニコチン依存度の判定や、吐く息がどの程度タバコによって汚れているかを確認する呼気一酸化炭素濃度測定、処方薬の禁煙補助薬、禁煙のアドバイスなどを受けられます。
処方薬の禁煙補助薬は現在保険で認可されているものには2種類あります。それぞれの大まかな特徴は次の通りです。
また、チャンピックスは自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないよう注意が必要です。特に生活の上で運転が必須の場合はニコチネルTTSが推奨されます。
禁煙成功率はどちらの薬を使用しても差がないとされ、海外ではニコチン製剤が、国内ではチャンピックスの使用率が多いといわれています。
肝心の治療成功率ですが、5回の受診を全て行うことができた方に対して、受診終了後4週間目(病院での初回受診から4か月目)まで禁煙できていた人を禁煙成功とすると、どちらのお薬を使ってもその成功率は80%を超えるとされています。
一方で、治療の平均継続回数は3回以上4回未満が最も多く、44.5%です。5回の治療を完遂される方は半数に満たないと考えられます。
『ニコチン依存症管理料による禁煙治療の効果等に関する調査報告書(平成29年度調査)』によると、治療を全て終了した390人について、治療開始から1年を経過した時点の禁煙率は47.2%とされています。
実は、禁煙治療は初回の治療から1年を経過したタイミングで再度保険診療で禁煙治療を受けることができます。もし、再喫煙になってしまっても、再度治療を受けて禁煙を目指すことができます。実際に、禁煙を成功できた方の中には複数回治療にチャレンジされる方もいます。
市販薬の禁煙補助薬
禁煙補助薬のOTC薬としては2種類の製品が販売されています。ニコチンパッチは第1類医薬品、ニコチンガムは第2類医薬品です。OTC薬のメリットは誰でもすぐに始められる点です。特に、禁煙する意欲が強い人は病院への受診なく禁煙できる方も多くいます。
OTCの禁煙補助薬の違いは以下の通りです。
ニコチネルパッチは医療用のニコチネルTTSとほぼ同等の使用感です。30の用量が無い点が異なっています。貼付場所は体毛の濃い場所や傷のある場所を避け、左右の上腕、お腹、腰、背中等を張り替えるタイムングで場所を変えながら使います。
ニコチネルガム使用時はゆっくりと噛むという点に注意が必要です。早く噛みすぎると効果が薄れるだけではなく、口内やのどへの刺激感といった副作用が出やすくなる可能性があります。
また、基本的なことですが、両方の薬剤を同時に使うことはできませんのでご注意ください。
まとめ
今回は、実際の禁煙治療について解説しました。禁煙は自身や周囲への健康被害の軽減、たばこ代の節約など多くのメリットがあります。喫煙者の多くはいつかタバコを止めたいと考えているといわれています。治療は自分の意思でいつでも始めることができます。病院にかかることに抵抗感がある方は、まずはOTC薬にチャレンジしてみるのも良いのではないでしょうか。