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タバコの成分を徹底解説!ニコチンやタールって何?加熱式たばこの健康への影響は?

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薬剤師のPHALが解説します

皆さん、タバコは吸われていますか?2019年、2020年に立て続けに健康増進法が改正され、原則禁煙とされる施設が増えてきています。タバコによる健康被害は様々に言われていますが、そもそもタバコの成分って何でしょう。何が健康を害するのでしょうか。

  • タバコの成分と健康被害について
  • 加熱式たばこと受動喫煙について
  • 禁煙と禁煙補助薬について

今回は、基本的なタバコと健康への影響についての知識を整理し、どのようなメカニズムでタバコが健康被害を起こすのかご紹介したいと思います。

はじめに

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なぜ禁煙が推奨されるのでしょうか?

2019年、2020年と続けて健康増進法が改正されてました。これにより、学校や病院等の施設では敷地内禁煙、事務所や工場、ホテル等の施設でも原則屋内禁煙となっています。

では、タバコの成分と健康への具体的な影響についてはしっかりと理解できているでしょうか。

世間的に嫌煙の方が多くなっていますが、喫煙者も非喫煙者も正確にその理由を説明できる方は多いとは言えません。禁煙を望む方も、これらの知識が曖昧なままでは禁煙の意思に影響があるでしょう。

今回は、ニコチンなどのタバコ中の具体的な成分と健康への影響を解説します。

タバコによる健康被害を引き起こす3つの成分

タバコの煙には主に3つの有害成分があります。①ニコチン一酸化炭素③この2つの成分以外の総称であるタールです。これら3つの成分が様々な病気を引き起こす一因となります。

最近の報告ではタバコの主流煙成分量の95.5%はガス成分とされています。この内、約88%は窒素と酸素、二酸化炭素、水分で、一酸化炭素(CO)が4%、その他有害が核物質が1.5%とされています。また、3.5%程度が粒子成分であるタール、ニコチンは0.28%程度とされています。

それでは、以下でそれぞれの有害成分について解説します。

ニコチンについて~神経への作用と依存~

ニコチンはタバコの葉が昆虫に食べられないように産生する毒性物質です。ナスやトマトなどの植物でも産生されますが、タバコの葉と比べると非常に少ない量になります。

1550年、フランスにタバコを持ち込んだ学者のジャン・ニコという人物から命名されています。

ニコチンは本来、神経毒性が強く、高濃度では神経遮断作用(鎮静作用)を、低濃度では神経興奮作用と濃度により逆の作用を示します。この現象は”ネスビット・パラドックス”と言われています。

また、報酬系と呼ばれる神経回路に作用します。これは達成感を得る神経系で一時的な快感を引き起こし、これを求めることがタバコの強い依存性の原因とされています。

その他の作用としては眠気覚ましや気持ちの高揚、イライラ感を抑える、認知力の向上、血圧・血糖値の上昇などの作用があります。以下でより詳細な作用機序を解説しますが、少し難しい話になりますので、興味がある方は読んでみてください。

A.神経興奮作用と鎮静作用

ニコチンは脳や骨格筋のニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)に結合して作用します。特に脳内の受容体に作用した場合はドパミンやノルアドレナリン、βエンドルフィンといった物質の放出を促します。

とくにニコチンの量が少ない場合は、ドパミンやノルアドレナリンの働きが強く、神経の興奮即ち気持ちの高揚や眠気覚ましの効果につながります。

一方で量が多い場合はβエンドルフィンの作用が強くなり、イライラを抑える鎮静作用などが現れます。

B.報酬系と依存

ニコチンは中脳の腹側被蓋野(VTAにあるのニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)に結合すると、神経線維の末端から報酬系の神経回路にドパミンが放出されます。これは多幸感・快感をもたらし、一般に報酬系と呼ばれます。

例としては人に褒められたい、好かれたいなどの欲求が満たされるときなどに活性化されています。この報酬系は、ヒトが社会的な行動を起こすための動機付けとしてなくてはならないものです。

ニコチンにより引き起こされるこの快感は、ニコチンが急速に代謝されるために一時的なものであり、これを求めることがタバコの依存症形成の原因となります。

ニコチンは脂質に溶けやすい性質と、血液中のたんぱく質と結合しにくい性質があります。この性質は喫煙による肺から血液への移動だけではなく、血液から脳への移動も早くします。一般には喫煙後、5~7秒で脳に達するといわれています。

また、ニコチンそのものには発がん性があるとされていませんが、体内でニトロソアミンという物質に変換されて、これは発がん性物質となります。

タールと一酸化炭素(CO)につい

タールはタバコ中のガス上成分以外の総称です。判明しているだけでも4000以上の物質があり、中にはベンゾ[a]ピレン・芳香族アミン類・ニトロソアミンなどの発がん性物質70種類以上含まれているといわれています。

一酸化炭素(CO)は物質の不完全燃焼で生じる無色・無臭の気体です。喫煙により吸い込んだCOはあっという間に肺から毛細血管へ移動します。血管ではヘモグロビンという物質が酸素と結合して酸素を全身に運んでいますが、COは酸素に比べて200~300倍と圧倒的にヘモグロビンへの結合が強いです。結果として組織には十分な酸素が供給されず、酸素欠乏となります。これは皮膚の老化や心血管病変の発症、胎児の発育不全といった影響があります。

タバコによる健康への影響と受動喫煙について

前項のような物質により喫煙者では様々な病気が発症しやすくなります。

喫煙者に起こりやすい病気と受動喫煙

喫煙者で起こりやすくなるとされる病気は以下の通りです。

  • がん:肺、口腔、咽頭、喉頭、(副)鼻腔、胃、食道、膵臓、肝臓、膀胱、子宮頸がんなど
  • 循環器:虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈りゅう、末梢動脈硬化症
  • 呼吸器疾患:慢性閉そく性肺疾患、呼吸機能低下など
  • 糖尿病
  • 歯周病
  • ニコチン依存症
  • 早産、低出生体重、胎児発育遅延など

これらの病気はいずれも受動喫煙でも起こりえます。国際がん研究機関(IRAC)は喫煙、受動喫煙、無煙たばこなどは全てヒトにける発がん性があると指定しています。

特に、受動喫煙では肺がん、虚血性心疾患、脳卒中のリスクは20~30%増え、年間1万5千人が亡くなるとの推定がされています。

また、受動喫煙の原因となるガス成分は空気清浄機では除去できず、空気清浄機の設置では受動喫煙の防止はできないといわれています。

加熱式たばこと受動喫煙

加熱式タバコは国内では2014年から普及しており、タバコの葉を加熱してニコチンを含むエアロゾルを発生させて吸引します。タバコ葉を使用せず、リキッドを加熱させる電子タバコとは別物です。

アイコス、グロー、プルーム、パルズなどの商品は加熱式たばことなります。

これら加熱式たばこの健康への影響は明確にはなっていないというのが現状です。紙巻きタバコと比較したデータがありますが、多くはタバコ会社が行っており、長期使用のデータではないことや試験結果の再現性が不十分であることなどから、結果の妥当性には疑問が残ります。

受動喫煙は煙による影響であり、タバコの葉を燃やさない加熱式たばこではその影響が一見無さそうです。しかし、加熱式たばこについて特殊なレーザー光で照射すると、喫煙者の吐いた息には大量の見えにくいエアロゾルが排出されていることが報告されています。これにはニコチンやアセトアルデヒド、ニッケルやクロムといった重金属が含まれるといわれています。

しかし、加熱式たばこの健康被害はそのリスクがはっきりしていないというのが現状です。WHOでは「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的」としており、日本呼吸器学会は「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は推奨できません」としています。

進む禁煙と禁煙補助薬

日本では1960年代後半に男性の喫煙率が80%を超えていました。そこから長い間。禁煙教育や啓発活動、たばこ税の増税等により。現在では男性29%、女性約8%程度で、男女合わせて約18%程度なっています。

しかし、世界の先進国と比較すると依然として喫煙率は高く、2016年のWHOの調査では、先進7か国(G7)のなかで、日本人男性の喫煙率はフランス人に次いで2番目に高いとされています。

国内では現在でも積極的に禁煙が推奨されており、実は喫煙者の多くは喫煙を望んでいるという報告もあります。喫煙者が禁煙を行う際に問題となるのは離脱症状です。禁煙時の離脱症状などには以下のようなものがあります。

  • 強くタバコを吸いたい気持ちがある
  • イライラ感、落ち着かない
  • 集中できない
  • 頭痛
  • 体がだるい
  • 不眠
  • 便秘

これらの症状が原因でなかなかタバコをやめられない方は多くいます。しかし、実際に医療機関に受診して正しい手順で積極的に禁煙治療を行う方は、多くの方が禁煙に成功します。

医療機関に受診する場合でも、そうではない場合にも禁煙には禁煙補助薬という分類のお薬が有効です。

禁煙補助薬とは

現在日本で使用可能な禁煙補助薬は医療用の薬剤(医師からの処方薬)が2種類と市販薬が2種類あります。医療用ではバレニクリン(チャンピックス®)とニコチンパッチ(ニコチネル®TTS)で、市販薬はニコチンパッチ(ニコチネル®パッチ)とニコチンガム(ニコレット®、ニコチネル®ガム)です。

バレニクリン以外はニコチンを主成分としており、まとめてニコチン製剤と呼ばれます。喫煙により摂取するニコチンを薬として代わりに補充し、徐々にその量を少なくすることで禁煙を図ります。

一方でバレニクリンはニコチン受容体に結合することで、前半の方で記載した達成感を得る神経系回路である報酬系をニコチンより弱く活性化します。このため、禁煙時の離脱症状であるイライラ感などを軽減する効果などがあります。

まとめ

今回は、タバコの成分とそれらが身体に及ぼす影響について解説しました。これら健康への影響や金銭的な理由から、喫煙者にも多くの人はタバコを止めたいと考えている人がいるといわれています。次回は、禁煙と市販の禁煙補助薬についてより詳しくご紹介します。

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