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こんにちは、季節の変わり目には必ず体調を崩す薬剤師のオータムです
「風邪の予防のためにイソジンなどのうがい薬でうがいをする」という人は多いと思います。
そんな最近日本国内で話題を席捲したことでも有名なイソジンことポビドンヨードなどのうがい薬ですが、風邪やインフルエンザに対しては「水うがい」よりも効果が劣るという研究結果があることをご存知ですか?
むしろ逆効果になるという意見もちらほら。
そこで今回は研究結果を基に「風邪予防にうがい薬を使うのは本当に意味があるのか否か?」について論文情報を基に解説していきたいと思います。
- 風邪の予防にうがい薬で日常的にうがいしているという人
- うがい薬の風邪予防効果が知りたいという人
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目次
うがいによる上気道感染の予防を検証した試験(日本)
今回紹介するのは、うがいによる上気道感染(いわゆる風邪)の予防効果について検証した日本で行われたとても有名な試験[1]です。
この試験は2002-2003年の冬の寒い時期に実施され、18歳から65歳までの健康なボランティア(387名)が対象となっています。
対象者は①水うがい、②ポビドンヨード(イソジン)うがい、③いつも通り(対照群)の3つの群にランダムに割り付けられました。
そして、2つのうがい群の被験者は水またはポビドンヨードで1日に少なくとも3回うがいをするように求められました。
60日間の追跡の結果、合計130人の参加者が上気道感染症にかかりました。
いつも通り(対照群)での初回上気道感染発症率は0.26回/30人日(30日あたり1日に0.26回発生という意味)でした。
一方、水うがい群では0.17回/30人日、ポビドンヨードうがい群では0.24回/30人日でした。
対照群に対する発症率比は水うがい群で0.64(95%信頼区間[CI]=0.41-0.99)およびポビドンヨードうがい群で0.89(95%CI=0.60-1.33)ということで、水うがいをした群では有意差がありましたが、ポビドンヨードうがい群では有意差がないという結果でした。
いくつか少し難しい言葉が出てきましたが、つまりこのことを簡単に言うと水うがいをした群では風邪予防の有効性が示されたけれど、ポビドンヨードうがい群では風邪予防の有効性が示されなかったという意味です。
このことを受けて筆者らは健康な人の上気道感染予防には簡単な水うがいが有効であると結論づけています。
つまり、わざわざポビドンヨードでうがいをしなくても、水でうがいをするほうが効果があるし簡単だしずっと良いということですね。
ちなみにインフルエンザに対しても同一試験で予防効果が評価されていますが、こちらは水うがい、ポビドンヨードうがいともに予防効果は証明されませんでした。
これはインフルエンザにうがいが無効ということではなく,風邪より数が少ないインフルエンザに対する効果を示すには症例数が少なすぎたためとされています。
すなわち現時点ではインフルエンザに対するうがい薬の予防効果は「不明」ということでしょうか。
インフルエンザは置いておいて、とりあえず水でうがいをすることで風邪の発症が2/3に抑えられた研究結果があるということは知っておいて良いと思います。
日常的にイソジンでうがいすることの弊害
でもうがい薬は薬局で薬として売っているし、なんか使っていると効果がある気がするからいつも使っているよ。実際毎日使っていたら風邪引いてないし!
という人もいるかもしれません。そのような人は日常的にイソジンでうがいすることには次のようなリスクがあることを頭に入れておいてほしいです。
日常的にポビドンヨード(イソジン)でうがいをしている患者に発症するヨード誘発性甲状腺機能低下症はよく知られています。通常、甲状腺機能低下症は軽度で、うがいを中止すると自然に消失します。
Iodine-induced hypothyroidism that develops in patients who gargle routinely with povidone iodine is well known. Usually the hypothyroidism is mild and resolves spontaneously upon cessation of gargling.
Intern Med. 2007;46(7):391-5.
ポビドンヨードでうがいをし続けることで甲状腺機能低下症が起きる可能性がある。このことは医療従事者にとっては周知の事実です。
普通の人でも起こりうるため、もともと甲状腺機能の疾患をお持ちの方はもちろん避ける必要があります。
ポビドンヨードうがい液の薬の説明書[3]にも、次の患者には慎重に使用することとして「甲状腺機能に異常のある患者[血中ヨウ素の調節ができず甲状腺ホルモン関連物質に影響を与えるおそれがある]」と挙げられています。
また、日常的にイソジンなどのうがい薬でうがいをすることで口腔内の常在菌が殺菌されてしまうために、むしろ感染しやすくなるという意見もよく聞くところです。
同剤が持つ非常に強い抗菌・抗ウイルス作用が咽頭や口腔内の正常の微生物叢を破壊したり、同剤が咽頭組織を傷害した可能性が考えられる。
公衆衛生 Q うがいによるかぜ予防・効果のエビデンス
そのため風邪の予防としてうがい薬を使うことにはまだまだ疑問の余地がありそうと言えるでしょう。
うがいだけでは感染は防げません。うがいよりも咳エチケット, 手指衛生が重要です。
現状では、うがいの効果を示すエビデンスは不十分で、同時に効果がないことを示すエビデンスも少ない。うがいは明らかに有効とはいえず、咳エチケットや手指衛生などと同等のレベルで取り組むべきものではなさそうである。
Question うがいは感染防止に有効ですか?
上記引用のようにうがいは「水うがいで風邪の発症が2/3に抑えられた研究結果がある」ということを念頭に置き、やらないよりはやったほうが良いくらいの気持ちで基本は手指衛生などをしっかりと行い、汚染された手で目や口などの感染経路となる粘膜を触らないといったことのほうが大切なのではないかと思います。
ポビドンヨード(イソジン)でのうがいに風邪予防効果は無いという今回紹介した研究結果は知っておくべきでしょう。
まとめ
- 水うがいをした群では風邪予防の有効性が示されたけれど、ポビドンヨードうがい群では風邪予防の有効性が示されなかった。
- 健康な人の上気道感染予防には簡単な水うがいが有効である。
- わざわざポビドンヨードでうがいをしなくても、水でうがいをするほうが効果があるし簡単だしずっと良い。
- 日常的にイソジンなどのうがい薬でうがいをすることで、ヨード誘発性甲状腺機能低下症が起きたり、咽頭や口腔内の常在菌の破壊によりむしろ風邪を引きやすくなったりする可能性がある。
- 風邪予防の基本は手指衛生や咳エチケットなどをしっかりと行うこと!
[1]Kazunari Satomura et al, Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial, Am J Prev Med. 2005 Nov;29(4):302-7.
[2]Kanji Sato et al(2007), Povidone iodine-induced overt hypothyroidism in a patient with prolonged habitual gargling: urinary excretion of iodine after gargling in normal subjects, Intern Med. 2007;46(7):391-5.
[3]ポビドンヨードガーグル液7%「明治」添付文書
[4]岡林里枝, 川村孝「公衆衛生 Q うがいによるかぜ予防・効果のエビデンス」日本医事新報 (4590): 58-59, 2012.
[5]今泉隆志「Question うがいは感染防止に有効ですか?」治療 92(6): 1692-1693, 2010.