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にきびの市販薬って本当に意味があるの?
にきびは思春期頃に多くの方に起こり、ほとんどの人が経験したことがある皮膚の炎症です。
にきびに対しても多くのお薬がドラッグストアに売っていますが、必ずしもにきびのある全ての人が使用するお薬ではありません。
今回は市販薬のにきびに対するお薬がどの程度まで効果があるのかを解説したいと思います。
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目次
にきびとその重篤度、皮膚科への受診について
まずはにきびという症状をもう少し詳しく解説します。
にきびは医学用語としては『尋常性ざ瘡』と呼ばれます。基本的には性ホルモンのバランスが崩れる12歳ころから発症することが多く、10歳未満での発症は稀です。
原因には性ホルモンの影響の他に、毛穴のつまり、アクネ菌という菌の増殖、皮脂分泌の増加などがあります。
にきびの発症は通常段階的です。まず、皮脂の蓄積などで毛穴の出口がつまります。この状態を『面皰』といいます。その後、面皰で炎症が起こり赤く腫れます。この状態でアクネ菌が増殖し化膿すると『嚢腫・硬結』が起こり、治癒後は傷跡として瘢痕化します。
また、にきびの重篤度には概ね以下のような目安があります。
皮疹の数 | |
軽症 | 片方の顔に5個以下 |
中等症 | 片方の顔に6~20個 |
重症 | 片方の顔に21~50個 |
最重症 | 片方の顔に50個以上 |
にきびが原因で病院にかかる人は19%程度といわれており、これはアメリカ(23%)、フランス(41%)、イタリア(39%)などと比較すると多くないとされています。
にきびへの対処法は多くの場合、市販薬を使ったり、自らセルフケアを行うことが多いようです。
市販薬の目的については次の項で触れますが、中等症以上のにきびの治療や10歳未満でにきびに悩んでいるお子さんの相談などは皮膚科への受診を推奨します。
にきびに対する市販薬の目的と効果
それでは市販薬はどのような方に対して推奨されるのかを解説します。
結論から言うと市販薬で購入可能なにきびの治療薬は、あまり強い効果がありません。少なくとも中等度以上の症状がある場合には市販薬では効果不足が考えられます。
日本皮膚科学会が発行しているガイドライン上では、推奨度A(強く推奨)、B(推奨)に該当する薬剤は全て処方薬であり、市販薬で買えるものはありません。
市販薬では下記のC1(選択肢の1つ)、C2(推奨しない)のものが購入可能です。
推奨度 | 薬剤 | |
C1 | イブプロフェン(外用) | 炎症状態の選択肢 |
C1 | イオウ(外用) | 炎症に関わらずにきび全般の選択肢 |
C1 | 清上防風湯・十味敗毒湯 | 炎症状態の選択肢 |
C2 | ステロイド(外用) | 効果がないとされている |
C2 | NSAIDs(内服) | 効果がある根拠に乏しい |
C2 | ビタミン(内服) | 害は少ないが、推奨はされない |
市販薬は主に軽症のにきびに対して使用するものと考えられます。また、にきびで市販薬の購入を希望する方の多くは見た目の問題の改善を目的とします。
『ピンプリットN』など、一部のにきびの市販薬には肌色の外用剤があり、見た目の改善に利用できるお薬があります。
ステロイドの外用薬は市販薬として購入可能ですが、にきびの治療目的で購入することは推奨されません。
ステロイドはその抗炎症作用から、一見にきびに対して効果がありそうですが、いくつかの臨床試験からその有効性が明らかではないことが示されています。(Acta Derm Venereol, 1989; 69: 452―453.など)
ステロイドの外用薬はむしろ痤瘡を誘発することも知られており、特に顔はステロイドの吸収も高い部位となるので、むしろ副作用のリスクが助長される可能性があります。
市販薬および処方薬のステロイド外用薬で『にきび(尋常性ざ瘡)』の適応があるお薬はありません。にきびには使用しないことが推奨されます。
一方で漢方薬は一部に選択肢の一つとなるものがあります。特に筋肉質で手足に汗をかきやすい人などには荊芥連翹湯、顔が赤く便秘気味の人には清上防風湯、かゆみがあったり、顔以外にも皮膚の異常がある場合は十味敗毒湯が選択されやすくなります。
スキンケア等の重要性について
ここまでお示ししたように市販薬はにきびに対してあまり強い効果を示しません。10歳未満や中等症以上のにきびの方は皮膚科に相談して治療を行うことが推奨されます。では自身でニキビに対して行えることは他にないのでしょうか。
洗顔に対して明確な効果を明らかにした臨床試験の結果はありません。しかし、にきびの発生原因に皮脂の増加があることから、洗顔によりこれを除去することは、洗顔を推奨する合理的な根拠になると考えられています。
なお、洗顔の回数は1日2回程度が良いとされています。(Pediatr Dermatol, 2006;23: 421―427.)
また、オイルクレンジング、スクラブ、消毒薬による洗顔についてはオイルクレンジングのみ、日本からざ瘡の個数が改善し、使用による悪化がなかったという報告があります。(臨皮,2007;61:654―659.)
にきびに対する食事制限はガイドライン上推奨されていません。チョコレートや砂糖、油分のある食べ物など、何か一部の食品とにきびの発症に因果の関係が明確に認められている報告はありません。
何か特定の食品を避けることで強いストレスを抱える状態は皮膚のバリア機能の悪化につながる可能性もあります。
極端な偏食を避けバランスの良い食事を心がければ、特に一部の食品を強く忌避する必要性はないといえます。
にきびに対する基礎化粧品(スキンケア製品)についての報告はいくつかあります。いずれの報告でも低刺激性、ノンコメドジェニックテスト済み、保湿性のある製品が選ばれているため、これらを満たす製品はにきびのある患者のスキンケアに推奨しやすいです。
また、化粧自体も推奨可能です。特に化粧による症状の悪化の明らかな報告がなく、化粧が治療を妨げないなどの報告があることが根拠となっていますこの際も、低刺激でノンコメドジェニックな製品を選択する配慮が必要です。
まとめ
- にきびは片側の顔に5個までが軽症
- 海外での病院受診率に比べ、日本での受診率は低い
- 市販薬は軽症、10歳以上の方に対して治療の選択肢となりうる
- 予防に1日2回程度の洗顔は推奨され、厳密な食事制限は不要である
- 化粧は低刺激性、ノンコメドジェニックな製品であれば、問題なく使用可能である
参考文献
1.尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017